光和コンピューター
第23回光和出版セミナー
多くの出版社が参加して情報をあげ、
取次・書店が予約活動のために
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第23回光和出版セミナー
近刊予約サイト&予約端末「PiT SPOT」発表会
(文化通信bBB 2011/3/28 掲載)
近刊情報センター構想の意義
≪新しい方向性を示す新刊情報センターにEDIを用いて支援≫
20年にわたり出版社・取次・書店といろいろシステムを作ることを通じて、業界ごとにいっしょに考え、システムの立場で出版業界に対し考えることが多々ありました。
そのなかで、近刊情報センター構想は、業界活性化に向けてよい企画だと考えています。
近刊情報センターの設立によって、出版社は本来の出版社に、書店は小売であり、本来の小売になり得る切り口になる要素を持っています。
そこでは、メーカーとしての、小売りとしてのマーケティングが必要になます。
機能が発揮されれば、返品率、仕入ができるできないなど大きく解決できる要素があるのではなでしょうか。
JPOの近刊情報センターは新しい方向性を示していると思います。
今回の構想に対して、システム屋である私たちはEDIを用いて支援する立場にあると思っています。
近刊情報センターへは多くの出版社が参加してもらうこと大事であり、そのためには情報をあげることがスタート、取次・書店がこれから出る本の情報を取り込んで、予約活動をしていくかがポイントになります。
私たちは、出版社・取次・書店を繋げる近刊情報を使った予約サイトを立ち上げます。
取次・書店側が近刊情報を取り込める機能をもったサイトを提供し、書店側から取次・出版社に対して予約ができる機能をサイトに付加して、出版社側は予約情報を受け取れる機能を備えています。
受発注だけの機能ではなく、近刊情報によって事前の反応が出版社にもわかる、書店も他店での予約状況がわかることで、予約を判断できる情報を3者の間で共有できるようにしていきたいと思います。
また、一般読者に対して、近刊情報を告知し予約を受け付けられる端末を設置できるよう「PiT SPOT」を製作、書店に提供していきます。
そのうえで、電子書籍時代にあたり、電子書籍を書店でどのように販売していけばいいのか勉強させていただき、将来、「PiT SPOT」を電子書籍を購入できる端末にし、書店に行けば電子書籍・紙の書籍に関わらず購入できるように発展させていきたいと願っております。
株式会社光和コンピューター 柴崎 和博
近刊情報で読者サポートを産業振興につなげたい
≪近刊情報センター構想の意義と現状報告≫
日本インフラセンター 永井祥一氏/浴野英生氏。
近刊情報センターの設立によって、書店がこれから出る本の情報を積極的に提供することで、本好きの読者の動きを加速させたい。
読者が年間7万5000点の新刊リストから選べといわれても無理。そこで、書店には読者が本を選択することをサービスすることをサポートするという役割がある。そのための情報を早く手に入れることが、今後、書店の営業戦略の重要な位置を占めるだろう。
一方、出版社にとっては、情報提供のコストと手間を削減することができる。
センターは、総務省の「新ICT利活用サービス創出支援事業」の一環で立ち上げることができるので、出版社、取次、書店の利用費用はかからない。書店も出版社も利用しない手はないと思う。
書店は近刊情報を客に合わせて紹介することが競争になる。そのとこで読者の輪を広げ、結果として返品を減らすなど、産業の振興につなげてほしい。
現段階で情報提供しているのは102出版社、5団体の107法人。情報を受け取っているのは23書店、5取次、7団体の35法人だが、書店の店舗数は1,000点を超えている。
紀伊國屋書店は1日2回データを取りに来ており、パブラインアシストで利用していると思われる。日本書籍出版協会はゴールデンウィーク明けには近刊情報センターのデータを利用するようになるのでセンターに登録することで書協データベースにも登録できるようになる。アマゾンジャパンは、「桜の咲くころ」には近刊情報センターの情報をそのままサイトにアップするといっている。
これからは規模の大小を問わず、特色がある出版社と、顧客情報をしっかり握っている書店が有利になる。そういうところにとって役に立つことになるだろう。
DMを顧客別に組み合わせて封入
版元とのコミュニケーション強化も目的
≪大学生協の近刊予約サイトの創設の狙いと効果≫
大学生協東京事業連合 渡辺 潔氏
店舗は全国に300以上あるが、以前から新刊・売れ行き良好書の注文集約を行ってきた。それをさらに便利にしようと、昨年11月から「専門書近刊サイト」を運営している。
統計を取ったところ、この10年で店舗に入る新刊の量は半分になっている。専門書はパターン配本が多いが、店が自分で売りたい本を発注することで、パターン配本から注文配本に変えるために作った。
また、専門書を判断できるように担当者の教育を強化することと、専門書出版社とのコミュニケーションを強化する目的もある。
出版社に呼びかけて、2年間のテストを行ってきた。近刊データを提供できるようになってきたので、11月からスタートした。
ちょうど、JPOの近刊情報センターの設立が重なったので、4月からはほぼそのまま近刊データを利用する。
また、ネット書店も運営しており、そこに近刊予約のシステムをつけた総合書店のウェブ書店を構築している。
店頭のサイトでは分野別に近刊情報を表示するので、担当ごとに予約ができる。
ただ、店舗の担当者が自店に合った商品を選ぶのは大変なので、今月から本によって1~5までのお勧め度を設定するほか、他店舗の発注状況を確認できる。他店の中から比較したい店舗を選んで登録するマイページの機能もある。
店舗でカードに入れて発注したという情報は、設定されている締め切り日に出版社に送信する。
また、出版社が店舗に情報を提供することもできる。既に出版社に対しては店舗にFAXを送るのではなくて、ここにPDFデータを登録してほしいとお願いもしている。1年以内にFAXからデータに切り替えてもらうようにしたい。
近刊情報は中小書店のビジネスチャンス
一つ一つ考えながら進めれば失敗しない
≪近刊情報センター構想への期待≫
NET21 田中淳一朗氏
地震によってお客様の消費形態が変わっている。20時以降はほとんど人通りはないが、昼間はいつもの2倍ぐらいの来客がある。日中に何冊も本を買った男性に聞くと、「何年かぶりに本をゆっくり選んで買った」と仰っていた。地域書店の役割を再認識させられた。
近刊情報を地域の書店がどのように利用するのかが重要だと思う。センターが提供する情報は平等に利用できるので、書店が役割を再認識するチャンスである。
これまで書店の業務は、黙っていても朝届く本を、棚に並べるだけだったが、近刊情報によって、自主仕入など、お客様への積極的な販売が可能になる。
NET21は、お客様が予約しやすい形にすることが重要だと考えているので、予約した本を実際に手にとって確認していただける「リクエスト予約」などを考えたい。それがリアル書店の役割だと思う。
取次のパターン配本は限界だと思う。近刊情報をもとに出版社と交渉して配本してもらうようにしたい。課題もあるが、早期に出版社とテストを始めたい。
近刊情報は、中小書店にとってこの10年でいちばんのビジネスチャンスだと思う。
ただ不安なのは、この取り組みを知らない書店が多いこと。是非とも広報に力を入れてほしい。そして、より多くの出版社に参加してもらう必要がある。また、予約と配本が結びつかなければ何にもならない。センターでは是非、予約受注への配本についても考えて欲しい。
出版VANも情報を利用して効果を上げるまで時間がかかったが、近刊情報もすぐに効果が上がるわけではないと思う。なので、当初からあまり大きな期待を持たず、一つ一つデータをどう活用できるのか考えながら進めば、失敗しないのではないかと思う。