日本聖書協会
聖書の仕掛品管理などにも対応
出版ERPシステム
(販売・製作・資材・原価・BI分析)
一般財団法人日本聖書協会様(文化通信bBB 2017/6/26 掲載)
一般財団法人日本聖書協会
理事長 | 大宮溥 |
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総主事 | 渡部信 |
所在地 | 〒104-0061 東京都中央区銀座4-5-1 |
電 話 | 03-3567-1988 |
キリスト教世界で「The Book」といえば聖書を指し、「バイブル」はギリシャ語の本に由来しており、聖書は「本」そのものと捉えられてきた。そして、ヨハネス・グーテンベルクが自作の活版印刷機で最初に刷った本は42行組の聖書であった。そんな聖書を日本で最も多く発行している一般財団法人日本聖書協会(JBS=Japan Bible Societie)は、2016年に光和コンピューターの基幹システムを導入した。独特な在庫管理にも対応し、スムーズな移行ができたという。
多種多様な聖書を発行
JBSの歴史は明治時代、ジェームス・カーティス・ヘボンが中心になって聖書の日本語訳が行われたことに始まる。その後、1876年に米国聖書協会、英国聖書協会が日本支社を設立。そして大戦を経て、1949年に財団法人となって現在に至っている。
本の代名詞にもなっている一『聖書』だが、JBSが発行する聖書の種類は200~300点に及ぶ。旧約、新約、旧約続編、そして1887年に日本語訳した「文語訳」、1955年に訳した「口語訳」、そして1987年にカトリックとプロテスタントの教会が共同で訳した「新共同訳」の訳文がそれぞれ刊行されており、体裁もミニ判からA4の大型講壇用までさまざまな判型、点字聖書、外国語聖書(輸入)、さらにさまざまな装丁のバリエーションがある。
聖書以外の聖書を題材にした絵本、マンガなどを含めると、JBSの稼働点数は約1000点にのぼるという。
仕掛品の管理も必要
基幹システムはかつて、東芝系のオフコンシステムを利用していたが、2008年にパソコンベースのシステムに切り替えた。しかし、そのシステムで利用していたWindows Server 2003のサポートが2015年9月に終了することなどがあり、2015年には次期システムを選定する必要があった。
しかし、当時利用していたシステム会社の対応が悪く、新たに光和コンピューターを含めた2社から見積もりをとった。
「聖書は仕掛品の在庫管理など独特な管理があるのですが、光和コンピューターは出版社システムの実績が多かったことが選定の理由でした」と広報募金部広報担当主任・情報システム・加藤太郎氏は述べる。
仕掛品の管理とは、製本所で製本前の状態の本文を在庫しておこくとを指している。聖書には「文語訳」「口語訳」「新共同訳」の三つの訳があるうえに、同じ内容でもサイズや装丁違いなど複数の製本形態がある。
さらに、ミッションスクールでの教科書採用が多い小型(A6判)の場合は、学校名の名入れといったスクール特装版もあるため、毎年変わる需要に応じて製本数を変える必要がある。このため、製本前の本文を各訳と判型ごとに管理しておく必要があるのだ。新システムではこうした管理手法にもカスタマイズで対応した。
専門取次、専門書店中心に流通
聖書の販売は、専門取次の日本キリスト教書販売(日キ販)経由がJBSの売り上げの半分程度を占めるほか、いのちのことば社、サンパウロ、女子パウロ会といった専門取次を通して、全国100余のキリスト教専門書店、そして大手書店など一般書店に流通している。
また、JBSの直営書店としてバイブルハウス南青山(東京都港区)、キリスト教書店ハレルヤ(熊本県熊本市)、BIBLE HOUSEびぶろすの森(旧堺キリスト教書店/大阪府堺市)、北九州キリスト教ブックセンター(福岡県北九州市)、京都ヨルダン社(京都府京都市)を運営している。
物流は埼玉県狭山市の自社配送センターで行っている。配送センターにも端末を置き、本社とはVirtual Private Network(VPN)で常時接続している。午前中に本社で入力した受注は、配送センターの端末で納品書、ピッキングリストなどを出力し、午後には作業を行って夕方4時頃までに出荷する体制をとっている。
時間はかかったがスムースに移行
今回は販売管理と製作・資材・原価管理のシステムを導入し、端末は頒布部(営業)の業務管理(注文入力など)で2台、営業係で3台、配送センターに1台の計6台で利用している。
販売管理ではシステム変更にあわせて共有書店マスタの利用も開始し、「それまでは書店名を入力していましたが、番線を入れると自動的に書店名が出るようになりました」と加藤氏。キリスト教専門書店も独自コードで管理しているという。
導入にあたっては並行稼働を経て2016年6月に本稼働した。当初の予定より半年程度長く時間がかかったが、「要件定義をていねいにしたりして打合せは30回行いました。多少時間はかかりましたが、しっかりやれたことが良かった。稼働後はほとんどトラブルもなく、多少あったとしてもすぐに対応してもらえています」と加藤氏はシステム移行がスムーズに進んだと述べる。
さまざまな事例も参考に
また、導入に合わせて、光和コンピューター側からの提案でデータ分析を行う「BI分析ツール」も別途導入した。
JBSは財団法人として毎年、聖書の頒布状況などを報告しなければならない。さらに、加盟する聖書協会の世界組織「聖書協会世界連盟(UBS=United Bible Societies)」への報告義務もある。
「BI分析ツール」を利用することで、こうした報告に必要な経営資料などの作成も容易になった。「自分たちだけで考えていると、いままでやっていたことしかわかりませんが、光和コンピューターは多くの出版社のシステムを経験しているので、課題をどうやれば解決できるのかいろいろな事例を示してもらえました。かゆいところに手が届くといった対応でした」(加藤氏)というメリットもあったようだ。