プレジデント社
雑誌予約購読コンタクトセンターを稼働
雑誌ブランドビジネスのプラットフォームに
雑誌予約購読コンタクトセンターを稼動
プレジデント社・出版ネット&ワークス・光和コンピューター
(文化通信bBB 2010/2/23 掲載)
株式会社 プレジデント社
本社所在地 | 東京都千代田区平河町2-13-12 ブリヂストン平河町ビル |
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電 話 | 03-3237-3711 |
資本金 | 1000万円 |
代表者 | 代表取締役社長 藤原昭広 |
株式会社 出版ネット&ワークス
本 社 | 埼玉県越谷市流通団地2-1-2 |
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電 話 | 048-989-1061(代) |
FAX | 048-989-1063 |
資本金 | 2000万円 |
代表者 | 代表取締役 小原達治 |
プレジデント社は出版ネット&ワークス(出版N&W)、光和コンピューターと共同で1月4日、雑誌の予約購読者向けに申込み受付・顧客管理、問合せ対応などのカスタマーサポート業務を行うコンタクトセンターを稼動した。今後、他の出版社との共同利用も見据えており、雑誌のブランドビジネスをサポートするプラットフォーム事業と位置付けている。
予約購読業務を業務委託
プレジデント社は2008年から商品管理・物流業務を出版N&Wに委託してきたが、このほど予約購読システムの運用と顧客対応についても同社に業務委託を行った。そして、システム運用と顧客対応の実務を光和コンピューターが担当している。
プレジデント社の雑誌販売ルートは、書店や駅売店、コンビニエンス・ストアなどの「取次ルート」が最大だが、このほかに最新号やバックナンバーを読者が直接注文してくる「直販」、そして「予約購読」の三つのルートがある。このうち「取次ルート」と「直販」は2003年から光和コンピューターのシステムを利用していたこともあり、「ノウハウも含めてベストマッチの会社」(原敏明取締役販売本部長)との判断で、予約購読も同社にシステムを任せた。
大きなコスト削減を実現
同センターは出版N&Wと同じ埼玉県越谷市の昭和図書の敷地内にあり、葉書、メール、FAXなどによる購買申込み受付から、問い合わせ対応、請求・入金処理、購買継続促進、配送データの作成、そして顧客データの管理まで、予約購読に関するすべての業務を行っている。
プレジデント社はこれまでこれらの業務を他社に委託してきたが、今回、3社の共同事業にすることで、「年間でかなり大きなコスト削減ができる」(原取締役)という。
DBマーケティング
さらに、今後は顧客データをマーケティングに活用することも想定している。
「今までの予約購読システムは、予約に対応して雑誌を届けることに絞った機能でしたが、これからは今まで以上に価値を出していくためにマーケディングに活用する必要があります」と原取締役は話す。
同社では『プレジデント』『プレジデントファミリー』『ダンチュウ』『七緒』『アルバトロス・ビュー』の5誌を発行しているほか、書籍、ムック、DVD商品、さらにセミナーなお多様な事業を展開している。
こうした媒体のひとつ『ダンチュウ』3月号で、創刊20周年記念の「日本酒試飲パーティー」への参加者を募集したところ、予定の1000人を大きく上回る2000人以上から申込みがあったという。このように雑誌ブランドが生み出した顧客をデータベースに登録していけば、物販やサービスなどの新しいマーケティングが可能となる。
また、日本ABC協会の発行者レポートによると、2009年上期の『プレジデント』の販売部数は19万2752部だが、このうち取次ルートが9万4327部、予約購読者部数が8万6543部と、予約購読の比率が高い。そういう面でも顧客データの利用価値は高いようだ。
顧客データベースでOne to One マーケティング
さらに、こうした顧客データと「直販」システムで蓄積した顧客情報との統合も検討している。「直販」の場合は、請求や配送といった業務のために顧客データを取得してきたが、それ以上の活用は想定してこなかった。しかし、最新号1冊やバックナンバーを購入する顧客は、予約購読をはじめとした同社商品の購入や、サービス利用で最有力の予備軍だといえる。
そういう意味でも、各雑誌が集めた顧客、そして何らかのきっかけで同社にアクセスしてきた顧客のデータを集めれば、相当数の顧客データベースを構築することが可能で、こうした顧客に対して「One to Oneで当社の商品やサービスの情報を提供していきたい」(原取締役)というのが、プレジデント社にとって最終目標だ。
複数出版社のプラットフォームに
一方、出版N&Wは、今回の共同事業について「出版物のみでなく、取扱商品の裾野を広げて事業の拡大を図りたいと考えています」と新宅広海課長は述べる。顧客情報を収集して販促活動に活かすことができれば、出版物以外の商材を販売するチャンネルを開拓することにもつながり、その物流を同社が担うというビジネスチャンスが生まれるとみている。
光和コンピューターも「これまで出版社に基幹業務システムを提供してきましたが、マーケティングを行うためのコアとなる顧客データの蓄積・管理についても提供していきたいと考えています。こうして我々が作ったプラットフォームを出版社が共同利用することで相乗効果を発揮することもできます」(寺川光男専務)という。
3社はこの仕組みを他社の出版社に解放することも想定しており、そうなれば1社あたりのコスト負担が軽減されるばかりではなく、顧客データベースを共有すれば、より効率の良いマーケティングも可能になる。
そのためにもセキュリティー体制には万全を期しており、今後、Pマークはもちろん、ISOの取得なども行っていく予定だ。
雑誌の販売が低迷し、広告収入も減少しているなかで、雑誌のブランドを使った新たな収入源確保は出版社にとって急務だけに、3社によるプラットフォームがどのような成果を上げていくのかが注目される。