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事例紹介

Case

出版システム専門書出版

トラベルジャーナル
システム導入でコストを4割カット
モノとカネの流れを一元管理し、属人的な業務から脱却
トラベルジャーナル社

A4資料《PDF》

「出版ERP」システム 「Publishing ERP」
株式会社 トラベルジャーナル社 様 (文化通信bBB 2007/8/27掲載)

株式会社トラベルジャーナル

鏑木清隆常務
本社所在地 東京都中野区東中野3-10-13
代表取締役社長 森谷 博
創 立 1964年6月16日
従業員 約30名
支局 北海道支局、東北支局、中部支局、関西支局、九州支局
主な事業 ・ツーリズムビジネス専門誌「週刊トラベルジャーナル」誌の発行
・日本の旅行
 マーケットや業界動向を配信する英文ウェブ媒体「TJI online」の運営
・アジアを代表する旅の祭典「JATA世界旅行博」の主催・運営
・「旅行関連会社ポケット電話帳」の発行、販売

 旅行業界に向けて専門情報を提供しているトラベルジャーナル社は、制作から販売まで一貫して管理する業務システムを導入したことで大幅なコスト削減を実現し、人件費に手を付けることなく、2001年9月11日の米国同時多発テロ以降の旅行不況を乗り切ったという。
 属人的な仕事の流れを組織的な流れに変えた同社のシステム化について紹介する。

導入の目的設定から始め業務の改革を進める

 同社は海外への渡航が自由化された1964年に創業し、週刊『TRAVEL JOURNAL』の発行をはじめとして、インターネットによる情報提供、世界旅行博の開催など、旅行業界を対象としたビジネスを展開している。

 また、グループ会社では旅行業やホテル業の専門学校も運営している。

 現行システムの導入を検討し始めたのは5年ほど前、それまでのオフコンを使った業務システムから、光和コンピューターが提供するWindowsのクライアントサーバーシステムに切り替えることを決め、約3年係りで制作原価管理から広告進行、財務までつながる仕組みを作り上げました。

 「オフコンのシステムは後々の変更が難しく、『システムを何の目的に使うのか?』について、設計に着手する前に予め詰めておくべきところを詰めていなかった」と鏑木清隆常務はかつてのシステムの問題点を説明する。

 それまでのシステムは、使い勝手が悪く、思ったような処理ができなかったため、個々の社員が自分のパソコンのエクセルなどで処理した結果を再度、業務システムに入力していた。そのため間違いが増えるとともに、リアルタイムに情報が集まらず、経営判断が遅れる原因になっていたという。

 しかも、個人がデータを管理するために現場に負荷がかかり、残業が増えるなど、いろいろな意味で非効率な仕事の流れになっていた。

導入の目的設定から始め業務の改革を進める

 「時代の流れでシステムを導入したため、マネジメントの目的を実現する手段であるべきシステムの開発を現場に任せてしまっていた。そのためマネジメントの意志が反映されず、できたものに整合性がなかった」(鏑木常務)との反省から、システム切り替えに当たっては、その目的を設定することから着手した。

 まず、有形資産であるヒト、モノ、カネのうち、モノとカネを一括して管理することで、経営判断に必要な情報収集を迅速にして、業績を上げることを目標にした。

 例えば、顧客管理は、それまで広告出稿、雑誌購読、書籍購入など商品ごとに管理していたが、業界誌の場合はこの3つの顧客が同じであることも多いため、マスタを作るに当たって、顧客マスタをベースにして、その中で顧客がどの商品を購入しているかを管理する形に直した。

 システムを構築するに合わせて「お客様を中心に『造って』、『売って』、『勘定する』流れを一元化した」(鏑木常務)といった業務改革を進めたわけだ。

人件費に手を付けずコストを4割カット

 ちょうどシステム構築を進めていた時期は、「9.11」で旅行業界は空前の不況に見舞われていた。しかし、業務の見直しと印刷費などの経費削減を落として全社的には4割削減することができた」(鏑木常務)ため、人件費などに手を付けることなく難局を乗り切った。

 その当時のことを鏑木常務は次のように話す。「人件費を削れ、ヒトを減らせという話も出たが、人件費や接待費、交際費などに手を付けるとモチベーションが下がってしまう。ほかに見過ごしていることがないかを調べ、シミュレーションを作って原価率の目標を設定し、幹部を集めて説明した。その結果、売上は増えない中で翌年にはボーナスまで支給することができた」。

 印刷費の大幅削減や不採算部門の撤退という大きな判断・決断も、一元化された情報があったからできたという。

広告費も効率的に

 システム化は広告など営業の効率化にも貢献している。

 また、新システムの稼動によって、広告の進行管理は受注前から始めるようになった。

 営業担当者は顧客を訪問した段階で、提案内容をすぐにシステムに入力し、成約すれば成就に変更、売上は財務システムに送り込む。

 以前は、担当者がそれぞれメモなどで管理していた進行管理をシステム化したことで、毎朝、自分のパソコンで案件をチェックして、締切が近づいたものから処理して行くという業務フローが確立した。

 さらに、広告の進行状況や台割まで全てシステムで管理しているので、広告掲載の漏れなどが必ずわかるようになり、営業が広告を取っても枠取りしていなかったといった凡ミスもなくなったという。

原価と予算の全てシステムでチェック可能に

 予算もシステムで管理しているので、費用が予算を逸脱していればすぐにチェックできる。例え印刷会社やライターから請求書が届いても、システム上に記録がなければ決済できない仕組みであり、雑誌の原価と売上は、1号ごとに完全に管理できる。

 また、システム導入に合わせて、予算・原価管理を行う業務管理部を新設した。経営サイドが設定した原価率の指標に経費が納まっているのかを、常にこの部署がチェックしている。これも人力ではとても出来ないが、システムがあるので簡単にできるという。

“属人的”な仕事を会社の資産に変える

 中小規模の企業はコストのかかるシステム化を躊躇するところも多いが、鏑木常務は自社の経験から「『うちはまだそこまでいっていない』という会社こそ取り組む必要がある」と言い切る。

 「システムへの投資は原価償却して、いつかはゼロになるが、人間には毎年コストがかかって絶対に償却されない上に、スキルが会社に残らない。チームワークにならずに属人的になってします。属人的にしか会社が回らなくなるという最悪の事態を避けるためにも、最初に仕組みを作ってノウハウを会社の財産として残して行く必要がある」と話す。

 システム化が、企業の業務見直しを進める上で、重要な手段となることを示している。