光和コンピューター
出版書店のシステム導入事例集
加速する出版流通システム vol.8
光和コンピューター(文化通信BBB 2019/1/7発行)
はじめに 文化通信社 星野 渉
本小冊子には、文化通信社が発行する『文化通信ブックビジネス(bBB・BBB)」に2016年7月以降に掲載した光和コンピューターの出版社システムと書店システムなどの導入事例を掲載しています。この連載が始まったのは2003年、以来、約15年にわたって出版社、書店のシステム利用について取材してきたことになります。
連載を開始した時期と今日を比べてみると、出版業界の状況は大きく変化しました。まず何よりも、出版産業の根幹を支えてきた取次システムが転換するという、大きな節目を迎えています。産業規模の縮小は、出版科学研究所の調査によれば、書籍・雑誌の販売金額は当時の2兆2278万円から1兆3700億円と大きく減少し、中でも、多くの出版社、取次、書店が経営の柱としてきた雑誌は、1兆3222億円から6548億円と50%以上も減っています。
そして、電子出版市場は2215億円に拡大し、特に電子コミックは大きく拡大しています。さらに、電子コミックの巨大海賊版サイトの存在が社会的な関心を呼び、政府が動いて閉鎖に追い込まれるといった事件も起きました。これまでの変化がさらに進んでいくことは間違いありません。
「電子書籍元年」と呼ばれた2010年から8年が経過し、出版物を電子化する流れは、全世界で進行しています。なかでもアメリカやドイツにおける書籍の世界では、プリント・オンデマンド(POD)の存在感が高まっているようです。両国の最大手取次はそれぞれPODでは国内トップシェアをもち、取引書店へのPOD版の迅速配送や、海外への提供など拡大しています。
日本においても、各電子書店が本格的なサービスをスタートしたことに伴い、この分野も出版社にとって無視することのできない市場になってきました。本書でも出版社の電子書籍販売管理の事例や、電子と紙を連携させるPODの試みを掲載するなど、こうした流れを反映しています。
ここ十数年にわたる出版市場の縮小も、大きな視点で捉えれば、デジタル化の流れが影響しています。このような環境の変化は、「グーテンベルク以来の革命」と表される通り、文字メディアにとって、根本的なものであり、後戻りできない流れです。
出版産業、そして個々の出版社や取次、書店などの企業も、この環境変化のただ中にいます。人間は自ら環境を変えることはできません。これまでの長い人類の歴史は、環境の変化に対応し、たえず自己を変革してきた歴史だということもできます。そして、出版システムとは、まさに出版産業の各企業が、環境変化に対応して自己変革を行うためのツールなのです。
本冊子をそうした取り組みの一助としてご活用頂きたいと思います。
あとがき 光和コンピューター 代表取締役 寺川 光男
2018年も災害が列島で相次ぎました。記録的大雪災害をもたらした「平成30年豪雪」、西日本を中心に甚大な被害をもたらした「平成30年豪雨」そして記録的な猛暑と大型台風が何度も上陸しました。
大雪・豪雨・猛暑・台風のリスクは世界規模で広がり今後も避けては通れないようです。地球温暖化に背を向けることは、不都合な真実を前に許されざる状況を迎えています。さらに、最大震度6弱を記録した「大阪府北部地震」、最大震度7を記録した「北海道胆振東部地震」など大地震に見舞われました。この島のどこで巨大地震が起きても不思議ではありません。誰にとっても他人ごとではない状況にあるわけです。被災された多くの方々と被災地域の方々に心からお見舞い申し上げます。
一方、出版業界も1996年をピークとした右肩下がりが続くグラフを何度見て来たことでしよう。底が見えない“不都合な真実”を前に、生き残るためのあらゆる施策の実施が必要です。それも迅速に。
出版業界が元気になることが、弊社の行く末と存在意義を担保される唯一の道だとして歩んでまいりました。業界の方々にお教えを頂きながら構築した情報システムの実例を文化通信様に取材頂き、bBB/BBBで連載してきた導入事例をまとめたのがこの小冊子です。第8集となりますが、この間、版元・書店・取次を中心にした130の事例と“光和出版セミナー”を中心とした様々なセミナーの紹介をさせて頂きました。
弊社は、300社の版元に販売系・原価系・分析系の基幹システムやホームページ・ECサイトを含む様々なWebシステムをご提供しております。また、多様な規模の書店様にPOSシステムやバックオフィース・書籍検索システム・音楽視聴機(検索機)・外商システム・本部システムをご提供すると共に、1000店舗のPOSデータや在庫データをお預かりしております。
従来の制度が崩壊したと言われる今、出版業界の情報インフラ構築とその活用が何より大切だとの思いで、出版社と書店を結ぶ新サービスを発表させて頂きました。詳細は、本小冊子に収めさせて頂いた第30回光和出版セミナーの紹介をご参照して頂ければ幸です。
これから出る本をJPRO(商品基本情報センター=日本出版インフラセンター)に連携して世の中に早く知らしめ、書店へのプロモーションやTRCへの選書依頼を配信し、書評掲載情報を共有し、ネット書店の情報掲載状況を確認し、出版社基幹系システムとの連携を実現したく思います。
書店の市中在庫を開示し、効率的な棚づくりを支援する共同サイトの構築で、書店の棚づくりや版元の書店営業の支援を行います。委託倉庫を含めた版元在庫との連携も視野に入れつつ、出版業界の情報インフラ提供を進めてまいります。
システム間のEDIの推進と、情報の共有を出版業界のインフラとして前進させていくことが、私どもの使命でもあると考えております。その先の、AIを中心とした新たな情報技術の活用が、需要予測に至るマーケティングの進化につながる道だと思います。
今後も、出版業界に広く深くつながるシステムインテグレーターとして精進してまいります。一層のご指導の程、宜しくお願い申し上げます。
(2018年12月19日記)
(注)この冊子の提供依頼などの問合せは弊社システム営業部(小堀、石橋宛)