光和コンピューター
出版書店のシステム導入事例集
加速する出版流通システム vol.7
光和コンピューター(文化通信bBB 2016/9/26発行)
はじめに 文化通信社 星野 渉
本小冊子には、文化通信社が発行する『文化通信ブックビジネス(bBB)」に2014年9月以降に掲載した光和コンピューターの出版社システムと書店システムの導入事例などを掲載しています。この連載が始まったのは2003年、以来、約13年にわたって出版社、書店のシステム利用について取材してきたことになります。
連載を開始した時期と今日を比べてみると、出版産業の状況は大きく変化しました。まず何よりも、取次の再編はかつて誰も想像し得なかったほどの規模とスピードで進んでいます。そして産業の規模が縮小しました。出版科学研究所の調査によれば、書籍・雑誌の販売金額は当時の2兆2278万円から1兆5220億円と大きく減少し、中でも、多くの出版社、取次、書店が経営の柱としてきた雑誌は、1兆3222億円から7800億円と40%以上も減っています。
そして、本格的に立ち上がり始めた電子出版市場は1502億円に拡大し、特に電子コミックは大きく成長しています。また、NTTドコモの「dマガジン」をはじめとした定額読み放題サービスが広がるなど、これまでの変化をさらにもう一段進めていくことは間違いありません。
「電子書籍元年」と呼ばれた2010年から6年間が経過し、出版物を電子化する流れは、全世界で進行しています。最もドラスティックに進んでいるアメリカでは、一部に電子書籍市場の成長が停滞しているという報告もありますが、実は、非出版社発のコンテンッの市場が拡大しているという産業の構造変化が起きているとの指摘もあります。
日本においても、各電子書店が本格的なサービスをスタートしたことに伴い、この分野も出版社にとって無視することのできない市場になってきました。本書でも出版社の電子書籍販売管理の事例や、電子と紙を連携させるプリント・オンデマンド(POD)の試みを掲載するなど、こうした流れを反映しています。
ここ十数年にわたる出版市場の縮小も、大きな視点で捉えれば、デジタル化の流れが影響しています。このような環境の変化は、「グーテンベルク以来の革命」と表される通り、文字メディアにとって、根本的なものであり、後戻りできない流れです。
出版産業、そして個々の出版社や取次、書店などの企業も、この環境変化のただ中にいます。人間は自ら環境を変えることはできません。これまでの長い人類の歴史は、環境の変化に対応し、たえず自己を変革してきた歴史だということもできます。そして、出版システムとは、まさに出版産業の各企業が、環境変化に対応して自己変革を行うためのッールなのです。
本冊子をそうした取り組みの一助としてご活用頂きたいと思います。
あとがき 光和コンピューター 代表取締役 寺川 光男
8月の東北北海道への台風上陸では、多くの方々が被災されました。熊本地震に続き、被災規模の大きさに改めて自然の猛威を感じます。被災地の方々には心からお見舞いを申し上げます。
統計史上初の出来事・想定外の状況……、私たちはこの言葉を何度耳にした事でしょう。想定外の津波による全電源の喪失、そして起こった福島原発事故。今や、統計史上初も想定外も言い訳にはならない地球規模の変動期を迎えているようです。
一方、長く続く出版業界の不況もまだまだ底が見える状況ではありません。2011年6月、ドイツの「図書流通連盟」によって発表された「55のテーゼ」。そこでは、2025年のドイツ出版業界の姿はかなり刺激的で興味深く、日本の出版業界とも共通する問題意識が語られています。
1番目のテーゼ“すべての印刷物がメディアとしての意味を失う。書籍・雑誌・新聞はそれぞれ売り上げが25%減少する。”2番目のテーゼ“最も減少するのは書店店頭での販売で31%減少する”
出版社・書店・図書流通連盟・ロビー活動・ブックメッセ・業界紙・メディアキャンパス・書誌データベース毎に具体的に語られる55のテーゼ。まさに、ここに書かれたテーゼが今日的な出版業界の問題と未来像を予見しています。その危機感が、ドイツにおいて業界を挙げて実現した電子書籍向けのインフラであり、新たなビジネスモデルである「トリノ・アライアンス」の創造に結びついています。
この間、日本における出版業界も、出版社様・取次様・書店様がそれぞれの立ち位置で自身の抜本的な変革にむけて惜しまない努力を続けております。それは持続可能な経営基盤の再確立と言っても良いかもしれません。
出版業界に育ていただいた私どもは、今こそシステムのご提供を軸にして“業務改革”“企業内イノベーション”“マーケティングの進化”等、情報戦略システムの構築、ひいては業界全体のイノベーションにもお役に立たせて頂きたく考えております。
弊社は、出版社様・書店様・取次様・出版倉庫様に多様なシステムをご提供させて頂いてまいりました。市中在庫開示の業界インフラ化・近刊予約情報の推進・直取引EDIの推進・電子コンテンツビジネスの推進・雑誌ブランドビジネスのサポート・ダイレクトマーケティングの支援・店舗活性化の為の店頭端末活用・廉価版POSのご提供・オンデマンド事業の創造・アウトソーシング化のご提案等々。
出版業界の様々なジャンルでシステムをご提供してきた弊社だからこそできる業界改善のご提案も沢山あるかと確信しております。
2003年12月にスタートしました本書掲載の事例紹介も13年目を迎えております。ユーザー様と文化通信社様のお力添えで第7集をご案内させて頂く事が出来ました。取材にご協力を頂いた皆様に感謝を申し上げると共に、この事例集が業界の皆様の改善や改革のご参考になれば幸いです。
(注)この冊子の提供依頼などの問合せは弊社システム営業部(小堀、石橋宛)