JRC
15周年迎えた小規模取次支えるシステム
出版ERPシステム
(取次システム)
JRC様(文化通信bBB 2018/4/23 掲載)
㈱JRC
代表者 | 後藤克寛 |
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資本金 | 1215万円 |
所在地 | 〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-34 風間ビル1階 |
電 話 | 03-5283-2230 |
営業代行、取次、物流代行まで網羅
小規模出版社の書籍を中心に流通・卸業務などを行う㈱JRC(ジェイ・アール・シー、旧称=人文・社会科学書流通センター)は、今年2月で創業15周年を迎えた。
JRCは小規模出版社の書籍を書店などに卸す取次業務のほか、出版社の営業代行、在庫の補完・出庫を行う倉庫業務など、出版社の営業、物流業務を総合的に受託する。
営業代行は主にFAX同報だが、首都圏を中心に主要書店には担当者が訪問営業もする。倉庫業務は埼玉県戸田市に物流拠点を持つ㈱富樫梱包(本社・板橋区)に業務委託している。
同社が設立されたのは2003年2月7日。その2年ほど前の2001年12月に経営破綻した書籍専門取次の鈴木書店に在職したメンバーが集まって立ち上げた。
現在の取次出版社は休眠講座も含めると約330社、このうち同社一手扱い出版社が100を超える。従業員は8人、多くは旧鈴木書店のメンバーだが、最近、20代の社員も入社した。
鈴木書店破綻の反省も
設立時から代表を務める後藤克寛氏も、鈴木書店に倒産まで25年努めたベテランだった。この経験から「自分たちのスキルによって特徴のある取次としてやっていこうと考えました」と、設立当時の思いを語る。
かっての鈴木書店では、労働組合が月次の決算、資金移動などを経営サイドと共有していたという。組合執行部に属していた後藤氏も、こうした数字を見て、会社の窮状は理解していた。
「数字から見て当時の鈴木書店の労働生産性は決して他の取次に比べて低くはなかったのです」というが、直接経営に携われない立場から、経営破綻に向かう社内で、「歯がゆい思いでいました」と振り返る。
JRC設立に当たっては、鈴木書店倒産の反省に立ち、鈴木書店を同じ神田村にあった他の中小取次が経営を維持しているビジネスモデルなども研究した。
そこから、単なる取次ではなく、出版社の営業、流通全般を担って「出版社が本作りに集中できるように、それ以外を請け負う」という事業モデルを構想した。
要所諸所で協力得る
もちろん、いきなりゼロから出版社と書店を結ぶ卸である取次会社を立ち上げることは難しい。そして、「大手取次に伍してやると身が細らざるを得ない」という経験から、まずは出版社の営業代行から始めた。営業代行ならば、出版社の代わりに書店を訪問し、書店との関係を作ることができるからだ。
ただ、当社は出版社から厳しい反応もあった。「鈴木書店の倒産では多くの出版社に迷惑を掛けていたので、マイナスからのスタートでした」(後藤氏)からだ。
それでも、鈴木書店時代に取引していた出版社を中心に、「要所要所で応援してくださる人がいました」と後藤氏。鈴木書店の幹部を努めた人からの紹介で大手書店との取引が実現したこともあったという。
一手扱い出版社100超に
書店との関係が深まるのに合わせて、徐々に書籍を仕入て販売する取次業務を拡大した。当初は難航した大手取次への仲間卸も広がり、いまでは日本出版社(日販)、トーハン、大阪屋栗田を通して書店に商品を供給できるようになった。
一方で、こうした過程で広がってきたのが一手扱い出版社だ。当初は取引先の出版社から独立して新規出版社を開業する人の支援からスタートしたが、いまは夏葉社、東京外国語大学出版会、東京学芸大学出版会、オデッセイコミュニケーションなど100社を超えるまでになった。
初めはかつて鈴木書店が得意にした人文社会科学系の出版社が中心だった取引先も、こうした一手扱い出版社の増加に伴いジャンルは多様になった。中でも、小さい書房やきじとら出版など絵本が増えてきたことに、鈴木書店時代に児童書も担当したことのある後藤氏は「やって良かった」と手ごたえを感じている。
業務できるのはシステムのおかげ
最初の業務システムは自社開発したため使い勝手は良かったが、請求・支払に計算がスムーズでなかったり、仕入と販売でそれぞれ商品データを入力しなければならないなど問題もあり、2014年に光和コンピューターの販売管理システムを導入した。
新システムの導入によって、それまでCSV形式で書き抱いたデータをEXCELに変換して処理していた計算をシステム内で処理できるようになったり、データ入力の二度手間を解消できるなどの効果があった。「いまも1~2週間に1回は担当者が来社して改善を続けています」(後藤氏)という。
同社では仕入販売と物流代行を行っていたり、販売先に書店だけでなく、他の取次もあるため、出版社や商品によって請求の仕方が違うなど、複雑な処理が必要になる。そのため、「システムがあるからこの人数で業務を行うことができています」と後藤氏は述べる。
いまの流通激変について後藤氏は、「本来、書籍の流通にはいろいろな形態があってよいのだと思います。既存の取次も変化しており、小規模ながら魅力的な流通も出てきています」と前向きに捉えている。