桐原書店
学校採用品管理などでカスタマイズ
出版ERPシステム
(販売・印税支払・予算企画・原価・BI分析)
桐原書店様(文化通信bBB 2017/4/24 掲載)
㈱桐原書店
創 業 | 1967年12月1日 |
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資本金 | 9600万円 |
代表者 | 斉藤智社長 |
従業員 | 110人(2015年12月現在) |
住 所 | 〒160-0023 東京都新宿区西新宿4-15-3 住友不動産西新宿ビル3号館 |
電 話 | 03-5302-7020(代表) |
営業所 | 札幌・仙台・埼玉・名古屋・大阪・広島・福岡 |
教科書学参などを発行する桐原書店は2015年、光和コンピューターのシステムを導入し、業務に合わせて採用品や小論文テスト・教材といった商材ごとのカスタマイズを行った。
英語学習で高いシェア
同社は高等学校向けの英語、国語の教科書、副教材や一般向けの語学書などを中心に、学校直販、取次・書店ルートを通して販売している。特に英語学習用テキストでは大きなシェアを持っている。
稼働点数は1400~1500点、今年度は英語約50点、国語・小論文約30点の計約80点ほどを発行。このほか、ニンテンドーDSソフトの「TOEIC(R)TESTスーパーコーチ@DS」や、無料アプリ「きりはらの森」といったデジタル教材も提供している。
教科書は英語『PRO-VISION』『WORLDTREK』、国語『新 探求国語総合 現代文・表現編』『新 探求国語総合 古典編』を刊行しているが、売り上げシェアで最も大きいのは、単語集や文法問題などの副教材だ。
こうした商材は、高等学校への直接営業による採用がメインだが、最近は採用品も書店経由で販売することが多くなっているという。
ピアソンからの離脱でシステム導入
1967年に創業し、今年50周年を迎える同社は、2000年にイギリスに本拠を置く世界的な巨大メディアコングロマリットの一つピアソン・グループの傘下に入り、2010年にピアソン桐原と改称。しかし、ピアソン・グループがアジア太平洋地区のビジネスプランを見直したことに伴い、2013年にグループから独立し、㈱桐原書店として再スタートを切った。
ピアソン・グループだった時期、販売管理などを行うシステムは、同グループのアジア太平洋地域各社が利用する共通のERPシステムを使用していた。香港のサーバーで各国法人の財務を連結して管理していたという。
この当時は「他国のグループ会社と同じサーバーとデータベースを使っていたので、他国で月次処理などをしているとパフォーマンスが低下するなどといったトラブルもありました」と総務局システム部部長・柳橋知恵子さんは振り返る。
グループからの独立によって新たなシステムを導入することになり、複数のシステム会社からの提案を受けた。結果的に光和コンピューターを選択したのは、「出版に特化していたことと、すでに販売管理や原価管理、印税支払管理などのモジュールが用意されたパッケージだったこと」と柳橋さんは述べる。
特に、取次への請求書、納品書といった帳票類がそのまま使えることが魅力だった。このことが、「ピアソン・グループのシステムは独立後も1年間使えることになっていましたが、早期に必要最低限の業務を回すことが必要でした」(専務取締役管理局局長・門間正哉氏)という状況で求められたという背景もあった。
小論文テスト管理などカスタマイズ
導入したのは販売管理、印税支払管理、予算企画管理、原価管理のシステム。予算企画管理は、企画や予算を管理し、刊行後の販売実績や、印税対応支払をトータルで管理できるモジュールだ。
販売管理では、一般的な取次納品とは別に、同社独特の商品「小論文テスト」に特化したカスタマイズも行った。
小論文は大学の推薦入試や二次試験で出題されることが多く、同社ではその対策模擬テストや教材を高等学校向けに販売している。テスト教材は、実施される時期の前に各高校に納品し、実施後に宅配便で回収し、外注の添削者が添削した上で学校に返却する。
生徒がテストの実施日に欠席するなど、納品数と添削して返却するテストの数が必ずしも一致しないので、納品時には請求せずに、添削後の納品が完了した時点で請求を起こす。このため、納品時に請求する通常の販売管理とは違った処理が必要になるのだ。
多様なセット商品や販促品の管理にも対応
このほか、セット商品や販促品の管理もカスタマイズした。書店向けに提供する新学期、夏季、センター試験などにあわせたセットの場合、商品1点ごとに在庫を管理しているが、学校採用品の場合は、検討用見本として教材本体と解答集、提出ノートなどをセットにして提供する。こうした見本は販売促進費に計上するため、それぞれ別のコードを持つ商材を一つのアイテムとして登録しなければならない。
また、教員向けの教科書指導書と「朱書本」などをセットで納入する「指導書パック」も、「朱書本」を別に単体で販売することがあるなど、独自のセット組みが多いため、対応したシステムが必要になる。
受注・入金状況を営業担当者に速報
新学期など季節変動に対応したシステムも必要だった。こうした受注・出荷が集中するシーズンには、商品をスムーズに流通させるために学校採用品の需要を見込んで取次に早期に搬入することがある。売り上げは納品時に計上するが、営業戦略を立てるため、実際の受注日情報を把握する必要がある。このため、取次に早期搬入した商品を通常の取次注文とは別に管理している。
こうした受注情報と入金の状況は、翌日には「速報」として営業担当者ごとにメールで配信されるという。営業担当者が売掛金の回収も担っているため、こうした情報をもとに学校訪問などのスケジュールを管理している。
倉庫とは専用回線で連携
在庫管理や出庫といった物流業務は、外部物流倉庫に委託している。桐原書店と委託倉庫間は専用回線を結び、桐原書店で出庫指示のデータを生成すると、委託倉庫のWMSシステムに取り込まれる。同時に委託倉庫にある桐原書店のシステムと直結したプリンターで伝票を出力している。
学校などへの直納品も、取次への納品もこの仕組みを使って行っている。
無料アプリが好評
近年、教材・教科書のデジタル化が進んでいるが、同社もDSソフトや学習用アプリケーションなどの提供をはじめている。
2015年4月にリリースした「きりはらの森」は、高校生向けの無料スマホアプリだ。教材を利用しながら使うことを想定しており、高等学校に教材を販売する際に、アプリが決め手になるケースが増えているという。「これからさらに威力を発揮するでしょう」と門間専務は新しい取り組みにも意欲的だ。