音楽之友社
印税・原稿料管理システムを導入
システムは「シンプルイズベスト」と実感
出版ERPシステム
(印税・原稿料管理システム)
音楽之友社 様(文化通信bBB 2014/3/3 掲載)
株式会社 音楽之友社
設 立 | 1941年 |
---|---|
資本金 | 6400万円 |
代表取締役社長 | 堀内美雄 |
所在地 | 本社・別館・音楽の友ホール 〒162-8716 東京都新宿区神楽坂6-30 電 話:03-3235-2111 戸田物流センター 〒162-0043 埼玉県戸田市新曽南3-16-14 |
音楽之友社は、長年使ってきた自社開発の印税・原稿料管理システムを、このほど光和コンピューターのシステムに入れ替え、業務の効率化を図った。さらに今後、販売・在庫管理なども含めて導入を進め、システム連携による効果を拡大していく考えだ。
月刊誌7誌と書籍・楽譜を刊行
同社は1941年に紙の使用制限を目的とした政府の第一次音楽雑誌3誌の発行元が統合されて設立した。以来、73年にわたり、クラシック音楽の総合出版社として出版活動を続けてきた。
事業の柱は、社名誌である『音楽の友』をはじめとして、『レコード芸術』『ステレオ』『バンドジャーナル』『ムジカノーバァ』『教育音楽 中学・高校版』の月刊誌7誌を発行しているほか、音楽学習者や教育者を主な対象にした事典・実用・理論書など書籍を刊行。そして90%がクラシックという楽譜を発行している。現在、書籍の稼働点数は約2800点。新刊は書籍を年間20~30点、楽譜を約120点刊行している。
1970年に独学でオフコン導入
同社のコンピューター導入は、1970年と早かった。当時の総務部長が独断で、日立製作所のオフィスコンピューター「HITACH-1」を無償貸与で導入。それ以来、歴代の経理課社員が独学でプログラムを組むなど、システム構築を行ってきたという。
「当時は実績を積み重ねて機械化は便利だと示して進めていました」と、当時、経理課員として入社した時枝正取締役執行役員(総務・営業部門)は述べる。
複雑だった支払い条件
印税・原稿料管理市システムは、1994年に日本電気(NEC)のパソコンPC9800を導入し、社内でプログラミングして作成したが、自社でのシステム構築には限界があり、また、専門の開発者が退社するなどしたことからシステム更新が難しくなり、外部のシステム会社から導入することにした。
社内でのシステム構築が難しかった背景には、同社の印税管理の方法が複雑だったということもある。「当社は著者の希望をかなり取り込んできたので、印税・原稿料の支払い条件がとても複雑で、それを間違いなく処理するため、これまでのシステムはあえてファジーな処理ができるように作ってきました」と時枝取締役。
このシステムを実際に担当した大島覚総務部部長(総務課・制作管理課・情報システムセンター兼務)は、当時のことを「外部のプログラマーとの作業で、毎日終電でした」と振り返る。
こうした独自の処理を前提に、複数のシステム会社でコンペを実施。その結果、光和コンピューターを選んだ。
その理由について時枝取締役は、「印税の仕組みなどをよく理解しており、我々が求めるシステムへの理解度が高かった。なにより出版流通にも詳しく、話をしてもすぐに通じました」と説明する。
「現金主義」と「発生主義」の違い
2012年11月1日に光和側と第1回目の打ち合わせを実施。当初は2013年7月の稼働を予定していたが、実際には昨年末の本稼働にずれ込んだ。
「光和コンピューターは既に印税・原稿料管理システムを持っていたのですが、当社の仕組みと唯一あわなかったのが『現金主義』と『発生主義』の違いでした」(時枝取締役)。
それまで光和コンピューターが手がけてきたシステムは、年度末をはさむ場合など、実際の支払が行われた分だけを調書にする「現金主義」だったが、音楽之友社は未払印税でも支払の対象にする「発生主義」で運用してきた。
結局、光和コンピューターが「発生主義」に対応したシステムのカスタマイズを行い、時間がかかったというが、このおかげで、税務処理などを変更する必要がなくなった。
また、もともとあった印税・原稿料の“ファジー”な部分については、無理にシステムに取り組むのではなく、イレギュラーな処理はイレギュラーに扱うという発想で、機械化せずに手入力で修正できる形にした。
「かっては複雑な処理を誰でもできるようにとシステム化しましたが、かえってシステムが複雑になり、開発を担当した会社でも変更できなくなってしまいました。今回はシンプルイズベストだと実感しました」と時枝取締役。
昨年末に支払調書を発行してシステム検証を終えたが、「調書は無事に発行でき、数字も合いました。これからはストレスなく作業ができるでしょう」と評価する。
使い勝手は以前のシステムとはずいぶん変わったが、「旧システムの基本データもうまくコンバートできました」と、実際にシステム検証などに携わった総務部経理課・佐野順子さんも話す。
順次・各システムを光和に
時枝取締役は、次に原価計算など製造を管理する仕掛品管理システムを光和コンピューターのものに入れ替える準備をしている。
「これもいままでのシステムはロータスをベースに構築したもので、あまりにも複雑な仕組みになっています」。
システムを入れ替えることで、印税・原稿料管理ともリンクさせて、かなり業務が合理化できるとみている。その後も、販売管理、在庫管理など、順次、移行していく考えだ。